存在/山川いちり
 
寄せ木座細工の夜とはよくいったものだ。

まるで私達は寄せ木細工のように
ひしめき合ってこの世界をつくっている

その一つ一つの細工として生きている
雑踏の中で何気なく足を止め佇んでみる

疲れ切った足を引きづって
無言ですれ違って行く見知らぬ人々

その息づかいがぎしぎしと錆びついた
時計の歯車のような音をたてているのが
聞こえてくる

そしてその音に耳を澄ましふと気づく

私もその錆びついた歯車のひとつ
なのではないかということに

そして私は対となる歯車もなく
どこにもはまることのない
替えの部品にもならない歯車
ということに

どこかに私という歯車が合うところは
あるのだろうか

探しに行こうか

それとも訪れを待ってみようか

いいや、そのどちらも違う

誰かの歯車に組み込まれるのではなく
私はこの手で歯車を生み出さなくてはならないのだ

そして生み出した歯車をつなぎ合わせて時を刻むのだ

それがここに存在するということだ

それが私になるのだ
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