秋の風にさらわれて/葉月桜子
 

ふわっと秋のにおいが わたしの頬を通り過ぎ
あの日を思い出す 

だいだいいろの あの花は 
今日も誰かを傷つける

少し寒い秋の風が わたしを通り過ぎ 
あの場所へとさらってゆく

赤く染まった木の葉は 本当は泣いていたんだ


どうしていいかも分からず
何が一番正しいのかも分からず
誰にも言えなくて


ただ赤くして
本当の気持ちそっとしまって
微笑んでた


本当は泣いていたんだ

空は 青くて 雲ひとつなくて
太陽は 眩しくて キラリと窓を照らすのに


わたしは ただ悲しくて
音がゆがんで聴こえてた

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