3/きるぷ
日曜の早朝のように
不穏な静けさのうちに固定された記憶のかずかずが、
箱のなかの玩具のように
あたまのなかに乱雑につめこまれている
手に取ればその一々は
あれもこれも絵になっていて、
額縁に収められ、
ときにはタイトルまで付されている
絵であれば鑑賞すればいいのだが、
しかしなにかが決定的に欠けていて、
その欠如したものこそが
忘れたい当のものであったのだと気づくとき
どういうわけか、
不穏を先鋭化させるラッパのひと吹きで
この静けさが掻き乱されればよいのにとおもう
そのような一瞬さえも
しかしすぐに忘れて、
やがてはあの日曜の早朝の絵の中に
穏やかなひかりの一片として描き込まれてゆく
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