虹を掘る/草野大悟
バス停のベンチに
毎日のように
座り続ける男がいるんだ
超然と背筋を伸ばし
ただ一点だけを見つめ
来るはずのないバスを
ひたすら待っている
廃線になった
路線バスのベンチで
今日も
何かを待っている男がいるんだ
赤銅色の顔
刻み込まれた皺
半開きの口
見開かれた
しかし
輝きのない目
男は
見えないものを見
聞こえないものを聞く
人の視線など気にもとめず
虹のたもとを掘る
節くれだった手に
あのころの鍬を握って
誇らしげに背筋を伸ばし
虹のたもとを掘る
あのころの自分を掘る
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