手首/木立 悟
 


金にあふれる雲間には
鳥も魚も子らもいて
紅と灰の問いかけに
青と銀の応えを返す



にぎやかで静かな暗がりの廻転
こぼれつづけるうた受けとめるのは
やわらかなやわらかなやわらかな影
羽のはえかけた背中を流れる
一本の木の生い立ちのしるし



降り終わる雪は
降り終わらぬ雪
飛沫は無数のひとつの明るさ
指さきの羽 指さきの羽
ただ一度の笑みに消えゆく羽



ひとつ ふたつ
しなる手首
泳ぎ去る魚
音のお手玉をくりかえし
遠く 近く
光のかたちになってゆく



煙は雲に
雲は煙に
渡りの風を示している
枝の姿を描きながら
金にあふれるものたちのゆく路
一本の木の生い立ちを
鳥と子らの声をまわり
手首の光に昇りゆく
手首の光に昇りゆく







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