冬と檻光(十六の視花)/木立 悟
 




花が流れる
路を川を空を径を
鐘の音も見張りも
気づかぬうちに


喪服の赤子
灯台を覆う花嫁
濡れながら
うたいながら


百合のむこうの枯れ野
変わりつづける色
夜の音 午後の音
無数の指先のような暗い光


何が何を照らしているのか
片方の目にだけまばゆく
水の底まで
赤と緑の羽はつづき


人の住処は
水のかたちに並び
ある日消え去り
火の芽を残し


けだものの会話 響きの行方
径の上の小さなこだまを
鳥の姿の渦や虚ろが
ついばみながら巡りゆく


手の甲の老いた脂にも
引き返せないうたは宿る

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