初恋/ただのみきや
 
夏の空気に寄って立つ 少女はあざみの花
かな文字で記した遺書のような視線が
日焼けした少年のまだ皺のない心のすみに
紅い糸を縫い付けることは終になかった
四季が幾つ廻ろうと心の真中が憶えている
――刺し通された蝶がふるえるような……
あれがそうだったと いまだから言える

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