季節、夏、咳/茜井ことは
目覚めればもう日の出
せみしぐれはまだ弱々しい
過眠の代償の
ぼやりと重い頭を引きずって
タオルケットを払いのけたなら
ひとつ、咳払い
空虚な部屋に広がる
わたしの粒子が
この部屋いっぱいに
あなたが満ちたなら
気怠い身体も軽くなるかな
この部屋いっぱいに
わたしが満ちるから
やわい心も硬直するのかな
ひとりでいるという現実と
向き合うように
もう一度、咳払い
さようならを言ってから
去っていく人の方がずっとすくない
だからわたしも
無言で再びまぶたをおろすの
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