たなかあきみつ詩集『イナシュヴェ』について/葉leaf
 
視線だった瘡蓋や錆の断裂が群れをなして漂着する
てんでに火気をおびた原景の破線はひたすら砂呼吸
声の痣はなめし皮からもウィスキイの獣毛からも
やおら発着を繰りかえし
風のレンズで発吃しては
その熱から波状的にブレつづける
       (「闇の線」)

 たなかの詩はこのように、硬質なイメージを次々と射出し、しかもそのイメージの連結は屈折的であり、全体として「では何を言っているか」というのをうまく説明できない作品が多い。「鶏卵と喉笛」を「変換」するといったとき、そこで読者に一番よく伝わるのは、「鶏卵」「喉笛」「変換」というイメージではないだろうか。そして、この意味的には不自然である
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