フレンチトーストとおちょこ傘/そらの珊瑚
くおじさん的風貌の頼れるやつだった
雨の日
傘をおちょこにして男の子同士ふざけ合ってる姿を見て
カンちゃん やっぱり小学生だったんだって思った
雨を集めてるんだ、としょうもないことを言ってたっけ
私も小学生だったんだけど
ねえ、カンちゃん、集めた雨を捨てるにはまだ早すぎたんじゃないの
彼女に最後に聞いてみた
お母さん、料理上手だったんじゃない? って
今朝も雨が降っています
ハンカチ持った?
弁当持った?
帰りは何時?
じゃあ、いってらっしゃい
いつものように
矢継ぎばやに家族を見送る
覚えておこうと思う
晴れの日も
雨の日も
慌ただしく過ぎていく日常のなかで
みな等しく永遠ではない命を
誰かにもらっていることを
卵と砂糖と牛乳を混ぜた液体に
浸せば固いパンが柔らかくよみがえることを
時々は昨日の残り物でごまかしながら
ずっと覚えておこうと思う
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