1/きるぷ
 
いつもの帰り道なのに
そこがどこだかわからなくて
途方に暮れてしまう

風景がぐるりと回転して
馴染んだ世界の裏側に放り出されてしまうあの瞬間に、

いつもの空はいつもの空でないように青黒くて
見知った猫はいつも以上によそよそしい

そのような感受の形式の中で
一々を括弧の中にとじこめ、
肩甲骨をこまかく震わせながら、
圧倒的に目覚めている

ぼくは家に向かっているのだ



裏返しの風景の中で
何もかもわからないくせに
ひとつ灯った明かりのように
ぼくは懐かしい孤独をみつける

そういえば、
すべての道は帰り道だったのだ
このようにわからなく、
途方に暮れてしまうまでは
戻る   Point(3)