箱庭の花/岩下こずえ
 
とはゆるさないということ。あな
たはどちらだって選ぶことができる。いつだっ
て。

わたしのことばにこころを傾けてはならない。
あなたは否定のことばしか口にしてはならない
。ここにはすべてがあって、けれどもあなたが
求めるべきものはなにもない。
あの夕暮れも最終列車のホームも屋上も四角い
へやの扉も雪の日の傘も歌声もなにひとつ知ら
なくていい。なにも理解しないままみんなみん
な灰になればいい。

可哀想な花のためにたくさんの水を遣る。ほん
とうのことは庭の隅にこの掌で埋めて、このせ
かいに遍在するものみんなみんな灰になればい
い。

階段の上から三段目であなたを見かける。わた
しは自由に選びとることができる。あなたもま
たさいしょからさいごまで、ゆるされている。
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