北の亡者/Again 2013神無月/たま
ブランコ
息を吸って
息を吐いて
息を吸って
息を吐く
いつも意識の片隅で
緊張している
生きるために
前脚を出して
後ろ足を出して
前脚を出して
後ろ足を出す
も吉は必死に歩いている
耳も目も遠くなって
鼻だけが頼り
でもブランコの柱は
匂わない
だからゴツン……
さて
わたしはどこまで
生きてきたのだろう
も吉の姿はそう遠くない
わたしの姿
だとしたらそれは
幸せな姿かもしれない
この頃
そんな気がしてきた
犬の時間と人の時間いったい
どちらが退屈なのか
も吉に尋ねてみようか
息を吸って
息を吐いて
息を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(33)