最終電車/チャオ
冷たく刺ささる外気に、空調の完備された部屋から出てきた僕は一瞬たじろいでしまう。エレベーターのドアを、もう一度閉めてしまおうと考えたところで、ふとわれに帰る。
「そうだ、終電だ」
早足で歩く人波と同じスピードで、「僕は僕だ」と叫んでも、説得力はない。それでも僕は僕なのだけど。
次々に戸口が閉められていく。午後六時に仕事場へ来たときには、きらびやかで華やかな街角も幾分落ち着く。それでも、忘れられたかのように光るイルミネーションや、眠ることを知らない街の光は、疲れた仕事帰りの僕の体を刺激するに足りるだけの輝かしさを持って誘惑する。
「今日も疲れた」
開放されたままに、電車
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