かたらない日/遙洋
 

かたりすぎると
ながれさってしまいそうだ
ことばとともに、かれらの年月が

日々のなにもかもを
あるきまわっているうちに
はなし尽くして

でもまだ、はなしていないことがあるかもしれない
いずれ海につながっているこの
水路をみおろせば
だれのともしれない水が
ただ満ちている
ここへはなてば同じように
だれのともしれない物語とまざりながらいつか
海になってしまうのか

かれらの物語もまた水のようなもの
そうだ
けれどなぜだかそれが信じがたい
だから今日はもうこれ以上
かたらないことにしよう


戻る   Point(5)