食卓に散乱した過去の血が詩篇の様に示唆している未来/ホロウ・シカエルボク
突っ込んではならない、またたく間に首を撥ねられて意志の無いものになってしまうぜ、見極めるんだ、それが一番大切なことだぜ―流れに乗ることが美しいことだって皆が信じてしまう、流れ?そんなものたったひとつの心に何の関係があるというんだ、たったひとつのものを信じろ、たったひとつのもので在り続けるために…無自覚に流れに乗るような真似だけは絶対にしちゃいけないぜ、すっかり暗くなったせいでガラス窓には部屋の中で立ちすくむ俺が映っている、まるで亡霊だ、と俺は思う、まるで亡霊のようだ、生きているから、生きているからこそだ、自覚的でいるからこそ―存在についてそんな印象を持つのだ、俺はガラス窓の世界に存在するたったひとりの俺と向かい合った、やつはにやにやと笑いながら、生身の俺のことを見つめていた、この夜もまた次の夜も、俺は確かな朝だけを待ち続けるだろう、そしてそれは、すでに死んだはずの食卓の血痕に、鼻を摘まずにはいられないような新しい臭いをもたらして俺を辟易させるはずさ…。
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