里帰り/梓ゆい
 
生まれて来ることの無かった叔母さんの魂に

「どうぞ召し上がれ。」と
今年一番の桃を

ざるいっぱいにお供えした。

蝋燭に照らされて

光沢を放つそれらは

早く食べてもらいたそうに
線香の煙を避けている。。

さっしに重なる提灯の明かりは

静かに畳部屋の位牌を照らし

そこにいるであろう魂に

今迄の一年間を語らう…。

「いくら、大変だ…。と思っても、最後には笑ってアニメを作るでしょう…。。」

奥の小さな位牌に手を合わせ

目の前の桃を一つ

丸かじりした。


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