犬死にアイリス/和田カマリ
 


「遅ればせながら、お前に躾をしてやる。」

その刹那
アイリスの様子がおかしくなった
まるで弾切れのレボルバーの・・
トリガーを引くように
カッカッ
ケケッ
次第に声が
小さくなっていく

犬が死にそうだ
俺の目の前で横転すると
前肢を突っ張り震え始めた

しかし犬は
そんな状況でさえも
更に吼えようとしていた

ケホケホケホ

虫歯で汚れたキバに
みるみる
血の泡が沁み込んでいく

アイリスが死んだ
歯を剥いて死んだ
目を開けて死んだ
血を吐いて死んだ
心臓麻痺で死んだ
死んだ
死んだ
死んだ

死後硬直の後
それは
吼えている犬の剥製のようになった

その沈黙はうなされるように
俺のクモ膜下にこびり付くと
次第に強度を増していった



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