ありがとうの言葉とともに/そらの珊瑚
の危なげな針と糸で
わたしは大切な友達に服を作ってプレゼントした
もはや人形の服にもならないような
細いはぎれは
縄とともに編まれて
背負い紐になった
重たい荷物を背負うとき
はぎれは人の肩でそっと息をしたことだろう
あの峠道で
はぎれは優しく支えただろう
黒いはぎれはかなしみの途中で目隠しに
傷口に巻かれたはぎれはやがて血の色に染まり
ハンカチの代わりに涙をふき
黒髪を束ねるリボンとなった
その家の階段を昇る途中
壁に飾られていたのは
絵と詩を収めた小さな額だった
「手のひらを太陽に」
やなせたかしと記されていた
わたしはそこを通るたび
心のなかで
その歌を口ずさんだ
詩は唄われたがっていたのだろう
そしてわたしは大人になって母となった
アンパンマンは子の一番のお気に入りだった
わたしは
きっと一生で使い切れないほどの
美しいはぎれを
もらったに違いない
今日、わたしは純白のはぎれで
一輪の花を作ろうと思う
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