ふたつ ひびき/木立 悟
暗がりを廻すまばたきについて
本をひらけば忘れてしまう
脆くまばゆい粉について
うたうことは覆うこと
それでもけして埋まることのない
ひとりとひとりのはざまについて
宙に漂う矢印は
次も方も示さずに
ただ隣り合う無に刺さり
明るい曇になってゆく
昼と午後を貼り合わせ
夜の前に置いている
無数の梯子を外された暮れ
誰も渡らぬ橋に満ちる
カストル カストル
荒れゆく庭の片方を
ただただ見ていることしかできず
わずかに照らすことしかできず
雪を噴き 光を噴く
夜の街の輪郭を
色は色を失ったまま
呼吸のないままふちどって
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