階段をおりたら/草野春心
ビ女=ひと}を見るとたまらなく寂しくなるし
きみと同じように笑う女を見ると怒りで拳が固くなる
なぜ、彼女はきみじゃないんだと
階段をおりても
何枚のドアをあけても
前にも 後ろにも
なぜ、きみはいないのだと
朝を夜に変えることができたらきみに会えるかい?
トーストをうまく焼けたらきみに会えるかい?
きみに会いたいと もう願うことをやめたら
またきみは
ぼくの前に現れてくれるのかい?
布団をはいで
最初の朝日を浴びたら
煙草に火をつけ、心のなかを
しっかりと見回してみたら
ほんとうの自分の気持ちがまっている
たとえ それが 手に入らないものだとしても
それはまっている
階段をおりたら
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