獣が見る月は/yamadahifumi
 



人生を棒に振る刹那

誰もいない暗闇で一人、痰を吐く瞬間

・・・僕は様々な事を思い出すんだ

かつて、父が僕に行った説教や

母が僕に告げた「人間失格」について

あるいは、姉の僕への「お前は人間に適していない」という宣言

先生は僕に「クズにも満たない」と言った

・・・それでも、僕には今の僕のように

あの月明かりのような一条の光がずっと見えていた

それが何を意味するかは分からないにせよ

僕はそれをずっと追ってきたのだと思う・・・

そして、その結果がこの暗闇での痰吐きだ

そして、その横をネズミがチョロチョロと行き過ぎる

さよなら、人類・・・僕は人間の類を追われて

再び、獣の類に帰ろうとしている

そして、帰りきった時に見上げる月はおそらく

今宵のように光り輝いているだろう

人間であった時よりも遥かに強く


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