幽霊が豆腐を食べる/ヨルノテガム
は渡り鳥が大海を渡り終えたかのようにスッとした
角ばった立方体の、白い透明感のある、一面に空虚を抱えた。
そんな、わたしはというと
ソレを指差して すこしわらって
ソレを何度も崩しては掴み投げつけわらって
ホントは崩れても掴み投げつけてもいないのに
木綿ちゃんだの絹ちゃんだの名前で呼んで大声で呼んで
呼べもしないのに
ゲラゲラわらってキスしたり、泣いていた
喉仏まで「おいしいわ」と言う用意も出来ていたのに
口がうまく開かないな
目もよく見えなくなってきたな
冷えたソレとわたしは似てるな
などと などと
何かがわたしの中から静かに奪われて行くのを
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)