泡を巡る(大きな服)/木立 悟
小さなほころび
どこへゆくのか
頬ふくらませ
どこへゆくのか
果実の耳を
匂わせすぎて
帰るころには
涙あふれて
雨の朝ふいに
何をしているの と問われ
振り向くと傘は
どこかへいってしまっていた
よくあること
横顔が刻まれた光も
少なめの飲み水も
いつものこと
眠る猫の手と足を
見えない蜘蛛が登ってゆく
水銀に似た不在の波
ぬらぬらと繰り返すざわめきと寝がえり
いつまでも眠れない夢を見る
長い廊下の隅で
どうでもいい荷物を片付けつづけている
通るもののない 明るい路
花のむこうから
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