Φ編/由比良 倖
 
φ
僕らは
「答え」を見つけられずに
どこへ行こう。

宇宙がそれを教えてくれた。
いつの日か来るだろうと思っていた。

そこは、有り金すべてで「クスリ」を買える店。
磨かれたウィスキーグラスが並んでいた。

長い間ビルの谷間を這っていた気がする。
そこには昼夜の区別なんてなく、
人類もゴミも全く平等だった。

φ
僕には君がいた。
知っていたよ
君にも同じ傷があることを。

僕が君の傷を舐めているあいだ、
君は僕に新しく深い傷を一杯付けていた。
僕が血にまみれ、
立てなくなったとき
君は初めて僕を見下ろし、
「好き」と言った。

僕には返す言葉が無かったよ。
だってそのとき君には傷なんか
もう一つも無かったんだから。
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