近景/岩下こずえ
 


ある傾斜においてうつむくのでなく
あたまならがっくりと
垂らすせいで
きみの、
頸椎が
くらい空にすっかりひえてむけてしまい
きみの視ないものにちゃんとかぞえられる
都心から二時間の
うすいのがよいと素直に逆をとるのがめんどうでさえない
温泉で
あたためられたが
それはわたしたちのためではない

この小さな駅舎も
ターミナル、突端でいて。わたしたちにつねに駅が
似合ってきたとするなら
秋雨の
薮のひかりも蒸散する
ものの
においだけ嗅ぎながら
行くあてもなくおきざりにしたからかもしれない
ここではないどこか
でもない
車窓で振りかえるまもなく見
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