パターナル/salco
 
と観ていた田吾作どもは
ぶっ倒れた血まみれの顔が瞬きせず
尚も口から溢れる血が仕掛けでないと
十全に見極めてから駆け寄った
取り巻いて見下ろす戦きは既にほくそ笑みだ
家に持ち帰り寄合の度に持ち出す
当座の語り草が手に入ったからな
どこの爺さんが何で死んだの
どこの倅がどう動いただのじゃねえ
よそ者の汚辱ほど美味い肴はねえ
異能者の蹉跌ほどの見世物もな
しかもさっき投げた銭
肘でも突き合や取り戻せる

麓の町から自転車で駐在が
そのまた隣町からパトカーが追っつけて
男の骸を救急車で運んだが
特大の骨壺の引き取り手は現われずだ
旅から旅の芸人だからな
手繰れる女は使い捨て
所帯なんかに用はねえのさ
それに英雄気取りを芸で済ますような奴は
とうの昔に勘当されたか
顔も知らねえ親父の親父も同じだったのか
墓もねえから誰も知らねえ
もし俺がその時息子だったなら
引き取って剥製にしてやったがな
高々と剣を引き抜いた姿
あっぱれな半死半生の立像だ
彫像じゃねえぜ
剥製だ
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