パターナル/salco
 
耳を塞いでよく聞きな
俺の生い立ちはこうだ
頭を巡らせてみると
格子の向こうに四角い光
その中からこっちを見ている一本の木
やっと首の据わった俺が
ベビーベッドの中にいたというわけさ
何かを探していたのかな
こっち側は沈んだように昏い
まあ天井には飽き飽きだった

頬に空っぽの哺乳瓶が触れていた
あるいはゴムの乳首が
コンドームだったかもな
口蓋に貼り付くあのゴムの味
今でもありありと憶えている
おまけにオムツが尻にべったり貼りついて
はみ出た糞が前に回って干乾びて
脚の付け根までこびりついていたっけよ
誰も来やしねえ
嬰児ゼロから諦念まみれだったってわけだ
[次のページ]
戻る   Point(13)