美しい死/まーつん
 
言の声が、
 刻まれる

 もう一度歩きたい
 この足がまだ、動くうちに

 もう一度歌いたい
 この声がまだ、届くうちに

 それを阻むのは医療の手
 生き永らえる日数が
 多い程よいと競い合い
 無理はおよしと、通せんぼ

 自由とは、何なのか
 命とは、尊厳とは

 幼児言葉で語りかける
 病院の職員たち

 身体ばかりに気を取られ
 永の年月に蓄えられた
 心の実りには気付けない

 猫なで声ではねつけられる、老人の願いと
 ペットのようにあやしつける
 若い指先の冷たさ

 心の奥で身悶えする、良心の声に蓋をして
 もがく魂を、ベ
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