籾殻/草野春心
 


  老人が籾殻を焼いている
  見えそうで見えない光のような匂いだ
  空は青く、少しあどけない
  わたしという言葉はもう
  ここには似合わない



  赤茶けた四角い煉瓦
  それは律儀に一つ一つ積み上げられ
  危うい夢をかたちづくる
  風が、波状に輝きはじめる
  かけがえのない
  秋……



  (これが最後の秋だったらどんなにいいか)
  (心が私を見失ってくれたら)
  (どんなにいいか)



  わたしという
  言葉はもう
  どこにもない




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