辿りつくまで/
石田とわ
そのひとは俯くことをせず
まっすぐに前をみていた
履いているジーンズはうす汚れ
家路をいそぐ人々が乗る電車の中
ぽっかりとあいた空間
そのひとは靴をはいていた
踵に穴があき、前は大きく口をあけ
素足の指がみえる
むかし靴だったもの
爪が長く伸びていた
そのひとの身になにがあったのか
問える人はなく、だれも知らない
電車を降りるときまっすぐに前を向く
まだ若く美しい彼女を
振り返ることはできなかった
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