砂情/ねなぎ
潮の匂いに
咽返るように
薄っすらと目を開ける
密閉されていると言うのに
滲み出して
すぐに染まる
手を伸ばして
助手席の地図を
掴もうとした時に
ダッシュボードから
エアコンに吹き上げられた
砂が
指の節に
流れた
ザラザラとした手触りと
シートとの摩擦で
滑るような紙を
上手く摘めなくて
座席の下に
膝を突っ張り
右手でリクライニングを
元に戻す
まぶしたような
フロントガラスに
煤けた様な
砂に埋もれた水門が
押し留められなかった残りを
無理やり踏み固めた道が
白々しいような
朝の光から
照らされていた
窓から広が
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