無色の欲望/葉leaf
 



始まりと終わりはどこまでも流れ落ちていくので
現在の幅に射し込む水の光だけで流れていく渓流
岩は感情のように水の流れを変え
木の葉は矜持のように水の面を彩る
僕はその川の方向のような
一個の論理になりたい
一個の機械的な連鎖を生み出す機関になりたい

建築はどこまでも増えて土地の限界を試し続ける
人々は関係から関係へと包括と還元を繰り返す
都市は修辞のように人の心をあいまいにし
社会は定型のように人の手足の歌を規律する
僕はその社会の照明のような
一個の概念になりたい
一個の明晰な理解を生み出す関数になりたい

この世でたった一人であるがゆえの孤独
歴史の中の特異点であるがゆえの寂寥
誰とも最終的には分かりえない絶望
僕はその唯一性に反逆を企てて
一個の無色の欲望になりたい
誰とでも分かち合え分かり合える
この世にも歴史にも何回も登場する
何の個性もない生きる欲望になりたい


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