かなしい唄/春日線香
化粧箱や封筒の
中には宝石があるものだと
女の子はそれくらい知っている
馬の形をした雲を追いかけて
知らない道を行くと
その細道の先には橋が続いて
途中、別れの言葉を思い出して
しゃくりあげて泣いてしまうことも
吹く風が頬に触れて
あかるい午後が夜に向けて伸びていくことも
千匹の子鬼が髪にまぎれこんでいることも
足の下にある硬い地面が
いにしえの気難しい生き物の背中で
その上をよじ登っていく自分が
向こう岸に渡れないことも
ぜんぶぜんぶ知っている
わからないことがひとつもないように
強がっているだけなのも
かなしい唄しか歌えないことも
ぜんぶ
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