ひとつ 指先/木立 悟
小さな虹が
扉をたたいた
革の鋏 半月の窓
銀と白がすれちがう径
蛇の頭に
打ち下ろされる槌
爪のはざまの血
底へ向かう 斜面の途中
渦を吸い込み
渦を吐き出す
廃路をゆく背
遠去かるのに
遠去からぬ背
吹雪のなかの紅の草
ただ子どもの声をして
白の重力に逆らいながら
空つき破る森を見る
おだやかなものほど烈しく拒み
冬は遅れ さらに遅れる
パレットと共に凍る筆
すべてを包むかたちをしている
ひびわれた明るい路
暗がりを暗がりへ曲がる路
空へひたすら
真昼を梳く路
指先の霧
水から起
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