ネックレス/草野春心
 


  午後六時十五分頃の
  日に焼けた街のことをきみは歌いたかった
  八月……
  その燻すんだ終わりにむけて
  けれどもきみの細い首で
  ネックレスが曲がっている
  飴色の光が魚のかたちを真似て
  いろいろなもののすきまに溜まっている
  カタカタ
  カタカタ、
  時が足踏みをしている
  きみは歌いたかった
  きみは願いたかった
  きみは叶えたかった
  心のなかでひざまづいた
  祈りのすべも知らないまま
  暮れゆく街のどこかへむけて




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