谷川雁詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
のような意味で、上掲した作品などは優れて政治的なものと言えます。
 さらに、美的なものの内容が受け手によって内面化されることもあります。上掲した作品だったら、世界に対するあくなき欲望が受け手によって内面化され、いつの間にか受け手もまた「世界をよこせ」と自ら欲望する主体に変わっていくかもしれません。そのように、美的なものはその内容によって、受け手の内面の傾向性まで変えていく可能性のあるものです。
 だから、詩というものは単純に「創作」と「観賞」という行為だけに閉じ込められるものではないのです。創作において、作者自らも変化するでしょうが、それ以上に観賞において受け手もまた変化していくのです。しかも
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