むこう/平井容子
 

紙の鎖の端をにぎって
妹も姉もいないところで
父と母が編んだ赤い塔をゆく
らせん階段はきらいだ
古い日々を思いださせ
とにかく青い
ノ・ヴァ、きみが秋晴れだったころ
ぼくが立派な牡鹿だったころ
あなたが銀河鉄道に揺れていたころ
わたしが花摘みに明け暮れていたころ
すべての街角へ降りていくきざはしはたしかに
ゆっくりと成長していた
それなのに

受け入れた
受け入れたんだ
ノ・ヴァ、むこうがわ、この美しい場所で
だれも祝わず
祝われず
あろうとして、つらい


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