緑/葉leaf
て積み重ねられた技術が実っていた
果実の確かな重み、その香り、その小気味よい形
少年もまた重みと香りと形とを、果実のように実らせていった
部屋は窓によって庭木へと開かれており
全ての本のページは梢のそよぎと優しく応答しあい
日の色の移り変わりによって変わる緑に
少年はじっくりとまなざしを落として行った
少年が衣服を変えるように木々は花を落とし
少年が花を摘み取ってくるとその空白を虫の声が埋めた
季節の巡りで一巡りする草たちの儚さが
少年の人生全体の儚さであり
季節の巡りによってより成長する樹木の堅実さが
少年の毎日の堅実さであった
少年は緑と契約を交わしたこともないし
少年は緑と愛し合っていたわけでもない
ただ、緑は根源から抹消に至るまで時間的に知覚するものであり
その知覚の重さを受け取ったり
その知覚に自分の構造を明かして行ったりすることで
少年と緑とは互いにその非定型を証明し続けていくのである
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