夜の柱/木立 悟
一時の財宝
裏がえしの空
誰も憤らない
銀のためには
遠く離れた場所で
ひとりは発熱する
不用意な一行を
消し去ったあとで
曇と曇の
重なりの牢
暮れはたどる
震えをたどる
格子は灰に
格子は鈍に
常に痛む右
格子は淵に
銀へ銀へ退がる蒼
橋まで 橋のむこうまで
枯れ川の背の
向かうはずだったところまで
夜の柱をめぐる双子
万華鏡からこぼれる光
目の水へ水へどこまでも
どこまでもどこまでも沈む音
裏がえしを裏がえすと
鉛は少し見えたきりで
すぐに坂のむこうへ消える
境いめはいつも銀ばかり
空の途中にわだかまる
さまざまな粒 さまざまな素子
音を柱を降らせながら
飛び交う銀をたしなめてゆく
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