軽口/コーリャ
 
ぜんぶ忘れてしまう。夢の破片がくだけちるのをみつめながら目覚める。日課のジョギングをする。僕は走る。走る。走る、が、走れ、にかわる。走れ。僕は走れ。心臓が溶けるまで。僕は、僕を、けしかける。息を、吐き切りながら。かんがえる。僕はいま直線だ。直線的に、あなたに、向かってる。もう二度と、会うことのない、あなたや。名前も、顔も、まだ知らない、あなたへ。あなた、あなた、と、走れ、走れ。だれでもない、あなたへ。強く。

・・・・・・そして絶句。とりあえずの結末。ノートを最後まできれいな字で書き終えたことがないように、きれいな終わりなんていちども出会ったことがない。だからせめて最後には、透明な怪獣への手紙をきれいな字で書こうとおもってる。透明な挿絵だってそえる。透明なデート。したいな、みたいに。心のなかではいつも冗談をいってる。破ったページでつくった紙飛行機が世界の透明に隠されていく。そんな冗談。もう二度とだれかのために詩なんて書かない。ぜんぶ愛していたよ。憎むことはあったけれど。それも、もちろん。冗談だけれど。さようなら。

と汚い字で書いた。

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