帰宅/
草野春心
家に帰って
ギターの弦を布でふく
なにか歌いたいような気はするけれど
なにも心にうかんでこない
なぁ、訳知り顔で、
知ったようなことをほざくような馬鹿にも
気の利いた冗談を気の利いたときに
さりげなく言えるような気障にも
なりたくはないんだよ、僕は
ギターを膝のうえに載せ
弦に指を添えじっとしている
歌いたいわけじゃないんだよ僕は、ただこうして
なにかを待っていたい
待っていればなにかがやってくると
訳もなく信じていたいんだ
戻る
編
削
Point
(4)