帰宅/草野春心
 


  家に帰って
  ギターの弦を布でふく
  なにか歌いたいような気はするけれど
  なにも心にうかんでこない



  なぁ、訳知り顔で、
  知ったようなことをほざくような馬鹿にも
  気の利いた冗談を気の利いたときに
  さりげなく言えるような気障にも
  なりたくはないんだよ、僕は
  


  ギターを膝のうえに載せ
  弦に指を添えじっとしている
  歌いたいわけじゃないんだよ僕は、ただこうして
  なにかを待っていたい
  待っていればなにかがやってくると
  訳もなく信じていたいんだ




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