二つのソラリスについて/渡邉建志
 
ン、とくに横から映した運転していないバートン(何しろ未来都市だから車は自走するのだ)と、後部座席から首をもたれかけさせる息子(この首の傾げ方、前へ倒れてくるタイミングの美しさ!)。
 ソラリスステーションで妻と主人公が昔のフィルムを見るシーンの壮絶な美しさ!過去を振り返ることの寂しさが画面に張り付いている。あの赤い服の母親が緑の中にすっくと立っている絵の美しさといったら!そしてその母から妻の映像に突然切り替わるときの不気味さと言ったら!そしてこのときの音楽。これ以外ありえないタイミングでバッハ(コラール「我なんじに呼ばわる、主イエス・キリストよ」BWV.639 )を流す。カットしたりしないで最初から最後まで流す。曲が終わるときにフィルムの光も消えるのである(その演出)!実際にはコーダの数小節をカットしているが、気にならないカットの仕方をしているのでOKだと思う。曲の途中を抜けさせる「戦場のピアニスト」の無残なカットよりずっといい。
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