秋の夜長に/アマメ庵
 
大人になったのわたしは 眠たい時に寝る
あるいは 眠たい時にも寝ることを許されない

子どものころは違った
短い針が9のところに来ると 布団に追いやられた
否応なく灯りが消された
二段ベッドの下の弟と喋っていると 叱られた
やがて弟が眠り ひとり夜に残される
カーテンから洩れる外灯の紋様を 瞳だけで追いかける
時計のチキ、チキ、チキ、を数えてみる
コオロギが窓から近くにいるぞ
近くの犬と 遠くの犬が鳴き声を競っている
いつしか眠ってしまう
母が朝食を拵える音が階下から聞こえると あたりはすっかり明るくなっているのだ

時計の針の音を聞くのは久しぶりだ
毎日そばで鳴っているはずなのに
大通りをバイクが走り抜けて行く
誰も朝食を拵えてくれない部屋で 眠ってしまう
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