恥知らず/ヒヤシンス
気が付くと私は広大な庭園の前に立っていた。
そこは薔薇の花で埋め尽くされ、屋敷へ続く道は整備されてはいなかった。
庭園の向こう、遥かなる屋敷の全貌は見えない。人間を死の果てに導く薔薇の棘が道をふさぎ、その入り乱れた蔓の隙間から一部が見えるだけである。
私は入り口の大きな門をくぐり抜け、庭園に足を踏み入れた。それがどんな結果を招くかも分からずに。
私はまだ幼い者のように好奇心に満ちていた。怖れは無かった。
なぜ人は大人になるにつれて怖れを成すのだろうと訝しがった。
それは大人たちが常日頃あの屋敷には近づくなと私に諭していたからであった。
怖れ、それはなんと人生を歩んでゆく者の障
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