Ex1*街頭の明かりが光り輝く夜/みけねこ
 
、いい気分だから詩でもつくろうよ。エリュアールみたいな、嘘と本当でできた透明な詩を考えよう。
 思いつきでいいと思う、別に落書きだってさ、だれがとがめると思う?だって、どうせ意味はないこと。
 大事なことを見つけてしまったあとでは、ね、何にだって意味をつけようとすると困ってしまうだけだよ。

 町は本当に静かだ。へんね、キーンとして耳がおかしい。
 受話器から何にも聴こえないでいる。絹ちゃん? 絹子? ああ、電波が途切れている。
 もしもし、圏外かな? いいえ、違う。コードが千切れているみたい。
 ボロボロの黒電話。いつ廃棄されていたの? 砂浜に…。あ、空が闇だ。
 ざ、ん、ね、ん、。全部ひとりごとだったようね。泣いてしまうよ。かわいそうなわたし、そしてかわいそうなきみを哀れんで、なんだか泣いてしまうよ。
 あんまりなことさせないで。
 
 丘の上の中学校から、乾いたチャイムの音がする。
 午前八時半の始業ベルだ。ああ、時間、もう行かなきゃ、行くね。じゃあ。また電話をします。
 絹ちゃん、本当の本当に、連絡待ってる。留守電でいいよ。さとみ。

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