青黄黒緑赤/アラガイs
 

生前の祖父のことをよく覚えてはいない
祖父はわたしが物心つく前には亡くなっていた
抱かれた話を聞いても
、抱きおとされた怖さを聞いても
、色の剥げた写真に並ぶしわくちゃな姿だけが写る
長生きをした祖母
口のわるかった祖母を忘れたことはない
やさしかった記憶が何故かいまでも残っている
気の強い母とはよく口喧嘩をして
野菜を投げつけて出て行くと言い張った母
僕はそれを必死になだめながら止めた
何年も寝込んだまま
(ありがとう)嗄れた祖母の小さな言葉を
最後まで看取ったのは母だった
それから数週間
母は眼を閉じて起き上がろうとはしなかった

僕は闇に取り残さ
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