水島英己「小さなものの眠り」を読んで 〜引用を生きる〜/中川達矢
 
り今となっては死となっている人物の場所を歩くことで、語りてはその中間を生きている。

 マラムレシュの羊飼いの少女と

 出会うことができるのだろうか
「ふるえるもの」

 過去との出会いを求める姿がここにも表れている。
 しかし、語り手は現在にある場所を歩くだけではない。

 「みちすじ」はかなしみに似ている
 かつて、そのとき、何かが
 わたしをいざない、その道に立ち止まらせたのだから。
「かつて そのとき 何かが」

 このように立ち止まることも時には必要になってくる。思い出すこと、考えること、そのために立ち止まり、現在にいながら過去を思うこと。そうすることで、
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