ひとつ 青へ/木立 悟
 




小さな灯
水面のさかしま
何処にも着かない径
原を割る径


夜の二重の影
灯りに満ちた 動かない船
港を囲む 誰もいない径
さらにさらに白い径


傾けただけで凍る杯
水たまりの空に突き刺さる
居ない鳥のためのうた
新たな夜をすぎるうた


牙の火が水を咬み
一瞬の晴れ間が原を流れる
異なる海へ
異なる海へゆく


切られた空が水路に澱み
光の組成を乱している
窓という窓
片耳の虹


空が空に引いた線を
かわるがわる奏でている
青のなかの
凍りかけた青


影の輪が
原を巡り 消えてゆく
聴こえない遠くの海に
曇がひとつ落ちてゆく


どこまでも未明の青空に
岩で刻まれた寺院があり
暮れと水銀 にじみ重なり
棄てられたものの記録を照らす

























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