虚ろなアパート/番田
不安な面持ちを抱えながら、頭を抱えて家の外を歩いている。そこには、いつもと同じようなつまらない街並みがどこまでも続いている。そして、いつもと同じ路地を、僕は歩いている。ここに引っ越してきたばかりの頃は、右も左もわからない蜂だったような気がする僕。帰り道では牛乳を買おうかとぼんやりと考えている。意識していないと忘れてしまうかもしれなかった。そんなふうにして歩き続けるなんと言うこともない今日の日の終わり。古ぼけたノートの上に、僕はいつもとりとめもなく詩を綴っていた。何十年も変わらないままのくたびれた私生活の中で、その感覚自体すら忘れて流れている。毎日絵を描いていたが、そこにあるのは誰にも何も感じさせない代物なのだと気づいていた僕。特に変わり映えの無いタッチの絵の具が、幾層にも塗り重ねられている。最近は陶磁器を描いている毎日。そんなことを語れる友人などどこにもいなかった。
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